トップページ > 学校案内 > ピックアップ純心 > 瀬谷ルミ子さん講演会ー世界の紛争地で平和構築に取り組むー

瀬谷ルミ子さん講演会ー世界の紛争地で平和構築に取り組むー

高校生講演会(2018.10.31)

世界の紛争地で平和構築に取り組む -平和のために何ができるかー
瀬谷ルミ子さん:認定NPO法人日本紛争予防センター(JCCP)理事長

  「私が紛争地で働くという進路を決めたのは、高3の春」と、瀬谷さんのお話が始まった。

 この講演会は、高校全学年を対象に進路講演として、同時に純心の平和学習の最終ステージ「行動する」の企画の一つとして開催されたものである。

 瀬谷さんは、イギリスの大学で紛争解決学の修士号を取得してまもなく、紛争後のルワンダで平和再建に取り組み、以来、シエラレオネ、アフガニスタン、コートジボワールなどで、国連PKO職員、外務省、NGO職員などとして、おもに紛争後の復興や平和構築に取り組んでこられた。専門はDDR-兵士の武装解除(Disarmament)、動員解除(Demobilization)、社会復帰(Reintegration)-。タリバン政権崩壊直後のアフガニスタンでは、軍閥の解体の仕事を任され、当時のカルザイ大統領から、「ミスDDR」と呼ばれたスペシャリストである。

 瀬谷さんは語る。第2次世界大戦後、日本が73年間平和を享受している間、世界では、どこで、どれだけ紛争が起こっていたか。生徒たちの目はその動画にくぎ付けになり、550という紛争の件数に驚き、その多くが北アフリカやアジアに集中していることに気がつく。

 シリアの写真、目の前で父親が撃たれた少年の悲痛な顔。誤爆により家が焼かれ、全身大やけどを負った男の子。1分後に生きているかもわからない世界に彼らはいる。

南スーダン、逃げてきた裸の子どもたち。まずは衣食住。5年後の平和はそれからの話。平和構築には順番がある。

 このような紛争地を平和にするには、どうしたらよいのか。瀬谷さんやJCCPの取り組みが紹介される。トップリーダー同士が仲直りをし、兵士から武器を回収すれば済む話ではない。元兵士が兵士に逆戻りしないよう、紛争地でニーズの高い職種につけるように職業訓練を施すアフガニスタンでの事例。また、内戦で農地が荒れた南スーダンでは、野菜を作る技術、加工する技術を教える。対立する人たちにあえて共同作業を課すことで信頼関係を生み出す。和解のプロセスだ。心に傷を負う子どもたちへのアートセラピーなど、地域だけでなく、人間の回復も欠かせない。

 こうした紛争解決や地域再建のノウハウを、現地の長老、女性たち、若手リーダーに教える。

 「現地の人が育ち、自分がここではもう役立たずになったことがわかった時、この仕事のやりがいを感じる」と瀬谷さんは話す。

 最後に瀬谷さんは、紛争地での仕事を志した理由を語られた。

それは、高3の春にたまたま新聞で目にした1枚の写真 - ルワンダ大虐殺の難民キャンプで、コレラで死にかかっている母親にすがる小さな男の子の写真だった。それが紛争地に向けて動き出すきっかけとなった。

 道を切り開く要素として、1つは選択肢。私たちには選択肢がある。人生を選ぶ権利、しかし世の中のすべての人がそれを持っているわけではない。そして選択肢には使用期限がある。

もう1つは、行動すること。瀬谷さんはその写真を切り取り、毎日目にしたという。その時の思いを忘れないように。また、誰かに話せば化学反応が起こる。そうした積み重ねで、前に進める、何かが始まっていく。

 

 以上の瀬谷さんのお話は、生徒たちに、どのように響いただろうか。

 世界の向こうに、紛争のさなか、明日の命も保障されない人たちがいることに関心をもってほしい。生徒たちが将来どのような職につこうとも、その技能は平和構築のための具体的な手助けとなるはずだ。いつかはわからなくても、手助けしようというマインドはもっていてほしい。瀬谷さんが、生徒たちの心にまいてくれた種が育ってゆくことを期待したい。

瀬谷ルミ子
瀬谷ルミ子
瀬谷ルミ子