卒業生の活躍

森(旧姓:咲間)彩香さん

35回生 2000年卒業
平成19年 日本大学歯学部歯学科 卒業、歯科医師免許取得
平成20年 日本大学歯学部付属歯科病院臨床研修医 修了
平成24年 千葉大学大学院医学研究院法医学教室 卒業、医学博士取得
平成25年 死体解剖資格取得
大学院卒業後から臨床歯科医、法医学教室特任助教を兼任。
令和4年現在は臨床歯科医、法医学教室研究員として勤務
現在:新津田沼歯科クリニック、千葉大学大学院医学研究院法医学教室

現在の自分(自己紹介・職業紹介等)

身元の確認手段としての歯科個人識別

私は中学・高校の6年間、純心で学びました。現在は、二児の母となり、主に歯科医師として働いています。

昨年までは、臨床の歯科医師と、法医学教室の教職員としてダブルワークをしていました。

「歯科法医学者」という職業をご存知でしょうか。ドラマなどで法医学教室のイメージはわりと定着しましたが、そこで働く歯科医師がいることはあまり知られていません。火災現場の焼死体や海や川で漂流していた腐敗死体、山奥で発見された白骨死体はどのように身元確認されていると思いますか?

身元の確認手段はひとつではなく、事例によっても優先される手段が違ったり、複数の手段を用いる場合も多くありますが、その中で歯の治療痕などから身元を明らかにする「歯科個人識別」は、信頼性の高い手段として位置づけられています。歯や骨の形態から年齢や性別などを推定したり、生前の診療録やエックス線画像などを基に同一人物のものか鑑定する異同識別をするために歯科医師が存在します。

私が歯科医師を志した背景には、父が歯科医師であったということが何よりも大きく影響していましたが、歯科法医学者を目指したのは、1985年に起きた日航機墜落事故において犠牲者の身元確認に従事した歯科医師によって執筆された「歯や骨からの個人識別」という本を読んだことがきっかけでした。

そこで歯科医師免許を取得後は臨床の世界には進まず、医学部の大学院に進学し、法医学を学びました。博士号を取得してからは10年近くダブルワークを続けていましたが、現在は子育ても含め、私自身のベストなワーク・ライフ・バランスを模索中です。

純心生活での思い出

豊かな自然環境の中で楽しんだ特別な体験

純心は、豊かな自然に恵まれた学校です。その環境を活かした様々な経験が、純心ならではの思い出として私の心には刻まれています。

モグラが顔を出す純心坂を友達とふざけながらバス停までダッシュしたり、運動会では農作業用の一輪車に乗って速さを競ったり、自分たちで育てた大根でたくあんを漬けたり。マラソン大会で走った滝山は本当につらかったですが、つらいことを乗り越える強さを身につけられたと思います。そしてそれらの経験を分かち合い、純心を卒業して20年が経ち、お互いママになった今でもよい関係でいられる友人は、純心で得た宝物です。

純心時代の経験が現在に活かされていること

学園標語 『マリア様、いやなことは私が よろこんで』

法医学の実務で歯科法医学者が扱うご遺体は、ウジがわいていたり、腐敗臭がきついこともめずらしくありません。その中での長時間の司法解剖は、まさに身体的・精神的ストレスのかかる業務です。

しかし、この業務を誰かが担わなければ世の中の犯罪は見逃され、多くの方が身元不明のまま亡くなることにもなりかねないのです。

一人でも多くのご遺体が家族のもとへ帰れるように、人が身元不明でなくなることのない社会になるように歯科法医学と向き合ってきたのは、純心の学園標語であり、建学の精神に通ずる「マリアさま いやなことは私が よろこんで」が知らず知らずのうちに身についたからかもしれません。

純心生へのメッセージ

リサーチ力とチャレンジ精神を

中学・高校時代は毎日が楽しいことであふれる一方で、友人関係に悩んだり、進路に悩んだりして落ち込むようなこともたくさんあると思います。いろいろな出来事があると思いますが、後からこの時期を振り返ると、本当に楽しくてキラキラしているので、いま純心に通われている皆さんにはその時間を是非楽しんでほしいと思います。

そして、興味があることはよく調べ、どんどん挑戦してください。当時の自分に足りなかったことは、リサーチ力とチャレンジ精神でした。一つの考えにとらわれず、もっと様々なことに目を向けていたら、もう少し違った未来があったかもしれません。経験は人生を豊かにしますが、その経験は、人に与えられるものだけではなくて、自分で考えて獲得していく方がより深く人生に刻まれます。